子育て

高校3年生の進路で大学の哲学科を選ぶことは自分の将来に役立つか?

高校3年生の進路で大学の選び、特に学部や学科を選ぶには自分の将来がかかっているという考えのもとに慎重に行うべきだと思います。昔の高度成長期には理系は何をやるかをある程度明確に決める必要がありましたが、文系についてはそんなに慎重に考えて選んでいなかった気がします。大学で学んだことが社会に出て直接的に役立っているという人は少なかったと思います。まずはどこの学部・学科でもいいので有名大学に入って、いい会社に入ってと誰もが考えていた時代でした。ですから同じ大学で文学部、経済学部、商学部などを併願する人も多くいました。しかし今はいくら大きな会社に入ってもリストラされたり、倒産したりと将来を保証されるものではなくなりました。そうなると大学に進学する高校3年生の進路で自分のやりたいことをつきつめて、失敗のないように選ぶ必要がますます高まっています。それでも社会に出てからやりたいことが変わったりすることはあるので、そのときに方向転換を余儀なくされることも多々あると思います。しかしそんなことはよくあることで、それを恐れて進学する大学の学部や学科を決められないということにはならないようにしたいものです。



 

そこで今回は子供がいわゆる人文系統の文学部の哲学科に行きたいと言い出したときに、親としてどう考えるかを検討していきたいと思います。大人のくだらない既成概念で言えば、子供が哲学科と言い出したときに、「何?」となる親がほとんどだと思います。古代ヨーロッパの哲学者達について勉強するのだろうと推測はできます。そして社会に出てから就職するのに何の役に立つのかと不安になるのではないでしょうか。哲学科で成功を収めるのは大学院に入って、研究室に残って将来の大学教授になることくらいかと思えます。ですから子供が哲学科に入りたいと言い出したときに、親としてはその選択の誤りをいろいろ話して、あきらめさせようとする傾向にあると思います。しかし哲学科は大学教授にならなかったとしても、本当に子供の将来に本当に役に立たない話なのでしょうか。そんな点について親として考えていきたいと思います。

大学の哲学科概要

人間のあり方、心のよりどころについて理論的に研究します。哲学は、「人間とは?」「社会とは?」という問いを追求するために、研究分析を通じて、人生・世界・事物の根本原理など、人間の真実を究めていく学問です。哲学は「この世界はなぜ存在するのか」「人生とは何であるか」といった本質的な問題に迫り、物事の原理を探求していく学問です。人間が生きていく上で正解はなく、いつの時代にも悩みや葛藤を抱えながら生きる人の姿があります。こうした状況の中から問題を提起し、さまざまな仮説を立てて検証し、物事の根底にある原理とは何かを深く考えていきます。哲学は最も古くからある学問の1つと言われ、過去に多くの哲学者が数多くの論考を試みています。先人らの思考を紐解きつつ、自分自身の問題として哲学的な論考を深めていくことに、哲学の面白さがあります。哲学は社会で直接的に役立つ実学ではありませんが、1つの命題に対して極限まで思考を深め、自分とじっくりと向き合う貴重な機会を与えてくれる学問と言えます。物事をじっくりと深く考え、本質に迫ろうとする思考を身につける上でも、哲学はこれからの人生を生き抜いていく力を与えてくれます。

哲学を研究する上でまず必要なのが、今日までに先人たちが築いてきた哲学の流れや思想の骨子をつかむことです。プラトンやデカルト、ニーチェ、カントといった代表的な哲学者の著作を読み解き、基本的な知識や思想の背景にある考え方について理解を深めていきます。その上で、自分自身が見出した問題について先人の論考を踏まえつつ、独自の仮説を立てて検証するといったことを繰り返していきます。思考を深めていくプロセスに終わりはなく、考え続けることそのものが哲学と見ることもできます。もともと古代ギリシャでは学問全般を指して哲学と呼んでいたほどですので、あらゆる事象が哲学に結び付き、探求すべき対象となっていく経験をします。学ぶ学問は以下のようなものがあります。

  • 哲学概論:長い歴史を持つ哲学の世界に触れ、哲学の大きな流れつかむとともに、哲学を研究する上での基礎的な知識について学びます。
  • 西洋哲学史:ギリシャ哲学、ドイツ哲学、実在哲学、フランス哲学といった西洋で発達した哲学について学びます。
  • 現代思想史:20世紀半ば以降に登場した分析哲学や大陸哲学といった、比較的新しい思想に対する理解を深めます。
  • 美学:美術をはじめ、演劇や文学といった芸術全般について、美とは何かを本質的に追究していきます。
  • 科学哲学:科学について客観的・批判的な論考を試み、その確実さや妥当性について深く考えていきます。

哲学のレポートは、テーマを指定されることもありますが、内容面では自由度が高いものが多いのが特徴です。自身の論理的考察力を高めていくことが大きな目的の1つですので、どこまで深く考察できているかを示すアウトプットとして、レポートは重要な位置を占めています。

哲学は実学ではないため、哲学を学んだことによって直接的に得られる資格はありません。就職についても同様で、哲学を研究したことによって直接的に就職が有利になることはほとんどありません。ただし哲学は本質的な問題について論理的に考える思考力が求められる学問ですので、物事を深く探求することが求められる出版社の編集者や大学の研究職といった職業においては、哲学を学んできたことが評価されるケースもあります。また論理的思考力が必要なソフトウェア開発や設計といった仕事においても、哲学を通じて鍛えた「考える力」が活かせる可能性があります。人工知能の台頭により、機械にはできない人間ならではの思考とは何か、我々人間とは何であるのか、といった本質的な問いに立ち返る必要に迫られることも、今後はますます増えるかもしれません。本質に迫って思考を深めていく哲学を学んできたことは、社会に出て仕事をしていく上でも広い意味において役立っていく可能性は十分にあります。

大学の哲学科の学び

大学で学ぶ哲学は、抽象的な概念を用いてすごく厳密に緻密に論理的に議論を組み立てていくような学問です。自分で独創的に生み出せる学問でもありません。真の独創は模倣から生まれるものです。まずは優れた先賢の思想を学ぶところからスタートです。ですから大学での勉強は著名な哲学者の文章を精読することが主になります。入試の現代文よりずっと精密に正確に読みます。これをやっているうちに、独創性が失われてしまう危険もあるかもしれません。自分なりの問題意識を失わないようにしつつも、哲学者のテキストを虚心坦懐に読むスキルを磨いていくことが求められます。

1、2年生のうちは、一般教養の授業(=哲学以外の授業)や第二外国語の授業が多くて、3、4年生になると専門的な授業が増えていきます。哲学科であっても哲学以外の授業も取ります。哲学科の授業は比較的楽に単位が取れると思います。英語と第二外国語は必修です。主に1、2年生の必修です。他の専攻と比べて、哲学科にとっては語学が重要になってきます。哲学者の思想を理解しようと思ったら原典が読めないといけないのです。特に大学院まで行く場合は、原典が読めることが必須になります。英語だけでは英米哲学にしか挑戦できないわけです(大学に入っても英語の授業はあります)。第二外国語は入学時に選択します。有名な哲学者はドイツ語圏とフランス語圏に多いです。自分が好きな哲学者がいるなら、その人の母語を選びます。古代ギリシャ語やラテン語を勉強したい場合は、第二外国語としては選択できないので第三外国語としてさらに授業を取ることになります。哲学の勉強は意外かもしれませんが、語学が命です。哲学の大学教授は皆語学が堪能です。学部生も原語で読むのは、東大など一部の大学のみらしいですが、基本的な単語を理解するためだけでも第二外国語の勉強をしておくといいと思います。

2、3年生から全学生が何かのゼミに所属することになります。言い換えると、ある指導教官に付くことになります。自分が研究したい・卒論で書きたいテーマを扱っている教授のゼミを選びます。ゼミは週1回程度あり、哲学のゼミの場合、哲学書の輪読をすることが多いと思います。1コマの授業で1ページくらいしか進まないこともざらにあります。修士や博士の学生も同じゼミに出席していると、先輩方のレベルに圧倒されます。テキストを精読するってこういうことか思い知らされます。学部生は交代で議事録の作成を担当したりして、これが勉強になります。ゼミを録音して、翌週までに先輩のアドバイスをもらいながら議事録を作成します。ゆっくりしたペースで輪読するので、ゼミが1年で終わることはありません。何年もやります。だから多くの学生は、テキストの途中から参加して途中で抜けていくことになります。それでもテキストの読み方の勉強になるのです。基本的に自分がやりたい分野で選べばいいですが、それがない人は教授の人柄で選んでもいいかもしれません。哲学科の規模が小さい大学だと教授の人数が少なくなって選択肢が狭まります。哲学=西洋哲学という場合も多いです。東洋思想を勉強したい人は志望大学をよく調べる必要があります。

そして一番大事な卒論です。その名のとおり、4年の1月ごろに提出する、大学での勉強の総決算です。字数は20,000字であることが一般的だと思います。原稿用紙50枚!3年次にだいたいのテーマを考えて、4年の初めごろに絞って、それから調べまくって、最後の1ヶ月くらいで一気に執筆するのが理想的です(研究を進めるうちに方針も変わってくるので、早くから書き始めても後ですべて破棄することになりやすい)。テーマは「ある哲学者のある本のある内容」くらいに絞ることがポイントです。「幸せとは何か」みたいな広いテーマで書きたい人が多いと思います。でもこれだと感想文程度しか書けません。テーマを絞ることで密な議論が展開できるようになります。テーマを絞ることが勝負と言っても過言ではありません。

哲学の論文ってのは書いていて死にたくなりますね。前提なしで議論を進めていくので「これで何か言えているのか?」「論証になっているか?」「ただのまとめじゃないか?」「ただの感想文じゃないか?」などと考え出すと精神が崩壊してきます。実際はひどい内容でもお情けで卒業させてもらえることがほとんどです。もちろん大学院を受験する人はガチで書く必要があります。それでも卒論には全力を尽くすことをおすすめします。人文系の学部で学ぶ意義は本(学術的なもの)を読み、文章(学術的で論理的なもの)を書くスキルを身に付けることにあると思っています。それらを鍛えるためには卒論に全力で取り組むのが一番です。

大学の哲学科まとめ

哲学は1つの命題に対して極限まで思考を深め、自分とじっくりと向き合う貴重な機会を与えてくれる学問と言えます。物事をじっくりと深く考え、本質に迫ろうとする思考を身につける上でも、哲学はこれからの人生を生き抜いていく力を与えてくれます。

*この記事はいろいろな情報を検討し、あくまで主観で書いていますことをご了解願います。

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