ログハウスのログ壁に塗る自然塗料に日本の伝統塗料という手もあります。代表的なものに柿渋や拭き漆などがあります。合成樹脂塗料が一般的になる前は、柿渋や拭き漆が建築物に使われていました。日本の伝統塗料はまぎれもなく自然素材であり、同じ自然素材のムクの木とも相性がいいはずです。互いの特性を最大限生かすことができます。
ログハウスのログ壁に柿渋
柿渋は、家々の軒先でつくられていた日本の伝統塗料です。柿渋は耐水、防腐、着色のほか素材を補強する効果もあります。昔は漁網や船の船底、木材、和紙、和傘など、生活の中で幅広い用途に使われていました。しかし、ニスやラッカーなど、利便性に優れて施工性の高い合成樹脂塗料が普及すると、柿渋はほとんど利用されなくなりました。ところが最近の自然志向の高まりで、柿渋が再び見直されています。柿渋の原料は渋柿で、タンニン成分が多く、もっとも渋みの強い青柿の頃に収穫し、その日のうちに砕いて絞り、ろ過したものを自然発酵させます。澱を沈殿させて、その上澄みが柿渋になります。熟成には1年以上かかり、古いほどよい柿渋になります。有効成分であるタンニンは害虫や気候から果実を守るポリフェノールの1種で、防水、防腐、防虫効果がある。住宅の現場では、内・外装材の塗装のほか、家具にも利用されています。化学添加物は一切含みません。塗布するときは直に塗りますが、粘度が高い場合には水で薄めます。乾燥後は、時間の経過とともに光沢にある美しい茶色に変わっていきます。もっとも塗った直後は色の確認ができないので、後日色むらが分かることがあり注意が必要です。
渋柿が敬遠される理由に、イチョウのような独特のにおいがあります。においは1ケ月以内にほとんど飛びますが、内装材は精製済みの無臭柿渋を使用します。外装の場合、どうしても劣化が早くなります。そのため、ベンガラや松煙などの顔料を混ぜて重ね塗りし、1年から2年を目安に定期的な塗り重ねをしたいものです。耐久性はさほどよくありませんが、その自然変化やメンテナンスを楽しめます。最近ではネット販売などで簡単に手に入るようになり、身近になっています。しかしあくまで自然塗料ですから、耐久性・耐候性には欠けます。柿渋は防水性を備えていますが、同時に水溶性もあります。外部に塗ると雨水で流される部分も出てくるので、定期的な塗り重ねが必要です。
ログハウスのログ壁に拭き漆
ウルシ科の木から採れる樹液を漆といいます。日本の伝統的な天然樹脂塗料で、箸やお椀、お膳などの漆器、家具や仏壇などの調度品、寺社仏閣など建物の梁や柱にも広く使われてきました。漆は、日本の古典的エコ塗料ですが、現在、国産の漆はわずかで、ほとんどを中国などの海外から輸入されています。拭き漆は木地に漆を刷毛で塗ってウエス(ぼろきれなど)で拭き取るという工程を何度も繰り返し、木目を際立たせる技法です。手間をかけただけ木目が引き立ち、艶やかで美しい深いあめ色の意匠となります。オイル系の自然塗料が含浸させるものであるのに対し、拭き漆は塗膜をつくるため、木材の保護塗料としての役割も果たしています。拭き漆は耐熱性や耐水性に優れ、抗菌・防腐効果もあります。近年の家づくりでは、カウンターや床材、大黒柱などの柱材に利用されています。また、耐水性・耐摩耗性が高く、キッチンカウンターなどにも向いています。
作業前の下地調整では、木地をきれいに仕上げることが必要です。漆はすぐに乾いて堅くなってしまうので、作業には手早さが求められます。また、肌につくとアレルギー成分ウルシオールのせいでかぶれることがあり、取り扱いには十分に注意が必要です。紫外線や乾燥に弱く、退色したり、極端に乾燥した地域では割れることもあります。場所や気候には考慮が必要です。
ログハウスのログ壁のまとめ
ログハウスのログ壁に塗る自然塗料で、日本の伝統塗料の柿渋や拭き漆という選択肢もあります。柿渋は耐水、防腐、着色、素材を補強しますが、外装には顔料を混ぜて重ね塗りが必要です。拭き漆は塗膜による木材の保護と耐熱、耐水、抗菌や防腐効果、紫外線と乾燥には弱いです。
参考:世界で一番やさしい自然材料
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