子供を動かすのに親として何が必要でしょうか。例えば勉強させようと思うときに「勉強しないさい」と命令口調で言ってしまうことが多いと思います。子供としては叱られるのが嫌なのでしぶしぶ勉強に向かいます。あるいは反発して勉強なんかするかと言って勉強をボイコットしたりするかもしれません。いずれにしても親が何かしなさいと親の威厳で命令したり、叱ったりしてもあまり効果がないということです。子供に恐怖感を与えて動かすことの無意味さがよくわかります。逆に子供をほめてその気にさせることはどうでしょうか。子供に頭がいいのでからと言っておだてるわけです。ほめることは命令したり、叱ったりするよりはいいかもしれませんが、子供も親のとってつけたようなほめ言葉には乗ってきません。ではどうしたらいいのでしょうか。子供を動かすのに一番いいことは子供に期待を持たせることだと思います。やはり子供に限らず期待が持てれば人は前向きな心になって動こうとします。とは言っても子供に期待を持たせることも簡単ではありません。ですからその前段階としてコーチングの働きかけるスキルを活用してはと思うわけです。
コーチングの「質問する」
親が子供と対話を始めるために行うことが質問です。親が発する質問によって子供と対話が生まれます。質問によっては思いもしなかったような答えが返ってくることがあり、親として子供の知らなかった一面を見ることもあります。ただ問題はどのように質問すればいいかです。質問の仕方によっては対話も生まれないことになってしまいます。質問には2種類があります。一つはオープンクエスチョンと言って開かれた質問です。具体的には5W1H(いつ、どこ、誰、何、なぜ、どのように)でたずねる質問です。もう一つはクローズドクエスチョンと言って閉じられた質問です。具体的には「YES」か「NO」で答えられる質問です。クローズドクエスチョンは親が子供に確認したいことがあるときに使います。ですからあくまで親側に立った質問で、子供にあまり意味はありません。逆に子供にとってはチェックをされているようなものであまりいい気持はしません。
オープンクエスチョンは子供が自由に話すことができる質問です。オープンクエスチョンには2つあり、いつ・どこ・だれとたずねる限定質問と何・なぜ・どのようにとたずねる拡大質問があります。特に拡大質問は子供の中に気づきを生み、子供に自分の頭を使って考えさせる効果的な質問です。ただ「なぜ」という質問だけは、過去の悪いことをたずねると詰問しているようになるので、過去のことでも良いこと、あるいは未来についてたずねるときに使います。更に親が自分が知りたい情報ばかりをたずねるのではなく、子供に自由に考えてもらうための質問を多くすることが大切です。そして大事なことは親が子供の頭の中まで推測してたずねるのではなく、頭を真っ白にして、なおかつ子供を信じて回答を待つという姿勢です。親は子供のことを子供自身にきかずに進めていることが多いという事実に気づくべきです。親が子供を対等にリスペクトして、思ったことや感じたことをお互いにそのまま言える関係を築ければと思います。
コーチングの「アクノレッジする」
アクノレッジするとは直訳すると「認める」という意味ですが、コーチングではアクノレッジは親が子供の素晴らしいと思えるところを見つけていき、それを言葉にして伝えていく行為です。更に大事なポイントはアクノレッジには子供の存在そのものを認めていくという意味合いをも含んでいるということです。アクノレッジのスキルには、良い結果を出したときにほめる結果承認、望ましい行為があったときにそれを認める行為承認、文字通り子供の存在そのものを認める存在承認の3つがあります。結果承認はほめる子育てが風潮される昨今はその重要性が知れ渡ってきていますが、注意したいのは結果承認だけでは逆に子供を不安にさせる可能性があるということです。ですからよく親がよかれを思って子供をたくさんほめても子供の方が冷めているということが起こるわけです。行為承認をするためには、子供を注意深く観察していく必要があります。そして朝起きたら「おはよう!」と声をかけること、子供に笑顔を向けること、子供の話に耳を傾けること、子供を抱きしめること、すべてが存在承認です。
またよく子供が遊んでいるときに親もいっしょにやってくれることをねだります。親は幼稚さやめんどくささについていけないことも多いかと思います。しかし親が子供と同じところまで下りて行っていっしょに遊んであげることは子供にとってみれば親からの大きなアクノレッジを受けたと感じるのです。ですから子供をあやすことがうまい人や保育士が子供といっしょになって遊んであげると子供がその人になつく理由がここにあると思います。ですから親は日ごろから子供のおねだりにできるだけ答えてあげることが、子供の自己肯定感を高めることにつながると思います。
アクノレッジするの存在承認の中の一つに、「子供が差し出したものをもらう」、それも心から感謝してもらうということがあります。子供が一生懸命考えて表現して話しかけてくることに対して、コーチングの聞くというテクニックで受け取ることはできます。しかしそのことに対して子供に感謝までして聞くことができているかというと疑問です。聞くという姿勢だけではそこまでのことはできません。心を込めて、感謝の気持ちを表現しながらもらうには親が子供に意識して働きかけようという意志があって初めて可能になります。子供から差し出されたものは大切に受け取る。こちらから差し出すときは、そっと差し出す。親が子供に何かあげることによってその子を認める、ほめようとすることはふだんよくやると思うのですが、ともすれば差し出すことばかりに意識が向きがちです。まず、親は子供から差し出されたもの、子供が言うこと、子供が表現してくることを受け取る、ただ受け取るだけではなく、感謝して大切にもらう、それを意識して行うことが子供の存在を承認することになることにつながります。
コーチングの「リクエストする」
リクエストは「要求」という言葉に直訳できますが、実生活では「お願い」という訳が当てはまるような設定が多いようです。親から子供に直接的にお願いをするとき、心の中にいる「プライド」が邪魔をするのを感じます。「お願いなんてするなよ、子供が分かるべきなんだ」とささやきます。そして、不満の度合いをますます上げて、アピールして、子供に無理やり振り向かせたり、反省させようとするのです。シュタイナー学園で先生の子供との関り方の中で、後片付けをしない子供に対して叱ったり注意をするのではなく、「片づけてね」と何度も同じ言葉を最初と同じトーンで繰り返す話を聞いたことがあります。何度かすると子供が片づけを始めて、終わったら「ありがとう」と言ってあげるそうです。シンプルにリクエストする、というのはコーチングスキルの中でも基本中の基本のようなものです。親には命令でもなく、不満たらたらで子供の罪悪感を煽り立てるでもなく、ただシンプルにリクエストすることの力が必要です。そして、それをやり続けることのできる親としての揺るがない「あり方」を手に入れたいと思います。
コーチングの「子供のために求める」
リクエストの親戚のようなスキルとして、wanting for(子供のために求める)というスキルがあります。意訳すると要求ではなく、要望するということになるのでしょうか。要望とは「純粋に子供のために、それを求める」というスキルです。先生、親・・・何か役割を背負って、その役割から「ねばならないこと」を伝えるのとは違います。子供の未来に関心がなければ要望はできないでしょう。親から子供の未来に向けて求めることを伝える、それが要望のスキルです。子供にこうあってほしい、「子供の未来のために求めること」を伝えるスキルが、要望(wanting for)です。リクエストでも要望でも、重要なのは、子供の力を信頼すること、親のプライドや恐れを脇に置いて真正面から向かい合うことなのだと感じます。親はとかく子供に対して勝手に自分で思い込んで、子供ができるかできないかの判断をしてしまう傾向にあります。それだからこそ子供と真正面に向かい合っていないことが多いのです。「子供の未来のために求めること」を伝えることは、その言葉そのものが「贈り物」です。「贈り物」なのですから、子供はそれを受け取るのも、断るのも、無視するもの、使うのも自由であることを、親は忘れてはならないのです。
コーチングの「子供に働きかける」まとめ
コーチングの親が子供に働きかけるスキルです。子供が自由に話せるような質問をすること。子供の結果、行為、そして存在そのものを認めること。シンプルにリクエストすること。子供の力を信じて、親のプライドや恐れなしで真正面から向かい合い、子供のために求めること。
*この記事はいろいろな情報を検討し、あくまで主観で書いていますことをご了解願います。
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